お別れの日(松村北斗)②
遊園地。子供みたいに遊んだ。
入場者数10万人目だった。
彼女はインタビューをされた。俺は知らない人のふりをしたけど笑ってしまった。
ジェットコースター。5回も乗らされた。
アイスクリーム、寒いのに食べさせられた。
お化け屋敷で彼女に脅かされた。
彼女が階段で盛大にズッコケて、笑った。
小さい子が俺の変顔を見て泣いた。
昨日のM-1のギャグを2人で話して、お腹を抱えて笑った。腹が痛かった。
いつもの公園。
静かな公園。俺達の笑顔が影のように地面に掘られているこの公園。
「寒いね」
「もう12月じゃん」
「そっか、寒くないとね」
「クリスマスかぁ〜」
「 … 」
答えることができなかった。
クリスマスは傍にいてあげることができないかもしれない。
「あのさぁ」
「うん」
「、ふふ」
「何?笑」
「私の事、」
「、うん」
「嫌いになったの、?」
辛かった。彼女にそんな言葉を言わせてしまったことが悲しかった。
「好きだよ」
俺は無理矢理、笑顔で答えた。
「じゃ、、どうして、?」
「好きだから」
そう伝えると、彼女は泣いた。
彼女の涙を見ると心臓が痛かった。
「なんでよ、、」
彼女の瞳の奥に吸い込まれそうだった。
もう辛い、では収まらない苦しみを感じた。
「好きだから、迷惑かけられない」
「迷惑なんて、かけてないじゃん、」
これからの俺は間違いなく迷惑だ。
彼女を幸せにできない。迷惑な存在でしかなくなる。
「悲しむから、」
そうとしか伝えられなかった。
彼女には俺以上に生きて欲しいから。
彼女が将来家庭をもって、幸せにしている姿が頭に浮かんだ。
あぁ、これでいいんだ。
そう思った瞬間、涙が流れた。
彼女の前では泣かない。そう決めていたのに。
彼女と 「ありがとう」 と言い合い別れた。
これ以上一緒にいたらダメだと思った。
彼女から離れられなくなる。離れてくれなくなる。
人生、最後の相手が彼女でよかったと思った。
素敵な女性だった。
喜怒哀楽が激しく、ドジで。
何にでも〝さん〟とつけていた。
動物が好きで、感動する話ではティッシュが2箱なくなるほど泣く人だった。
いつもの彼女の家からの帰り道。
あと10分で着く、そんな頃。
今まで経験したことの無い痛みが襲った。
吐き気。頭痛。意識が朦朧とする。
死ぬ。そうだ。俺、死ぬんだ。
そう思い、俺は車から降りた。
彼女を思い、道を歩く。
足は動かず、体も重い。一歩一歩が進まない。
息も切れる。助けを呼ぼうと携帯をとる。
あそこにあるベンチに座って、病院に電話をしよう。
「あ … 」