静かに、虚しく、⑤
「そうそう」
マネージャーさんから伝えられたものは
ある映画監督が私の事を主演にしたいと言っている
と言ったものだった。
とても嬉しかった。
初めての主演映画。それは恋愛小説の実写化。
偶然出会った二人が再び偶然出会って結ばれる
といったものだった。
「素敵なお話ですね!是非やってみたいです!」
「相手の方はもう決まってるみたいなのよ」
「どなたなんですか?」
「それがギリギリまで監督と本人以外は秘密みたいで」
「バレたらまずいんですかね、?」
「かもしれないわね」
相手の方はそんなに気にはならなかった。
今は自分。自分が成功することだけが一番だった。
「今日は宜しく御願いします!」
初めての撮影日。
初めての環境に緊張していた。
『〇〇さん入られまーす』
周りの声が大きく聞こえなかったが
相手の男性が入ってくるようだった。
少し緊張した。
初主演のお相手だ。素敵な方がいいなと思った。
『宜しく御願いします』
その声には聞き覚えがある。
『今回、叶多役を務めさせて頂く森本慎太郎です』
そこには笑顔で私を見つめる彼がいた。