静かに、虚しく、④

 

 

 

寒さと暑さに耐えて四日目が経った頃

コンクリートで埋まっていた階段に光が差した。

 

 

 

「おーい、大丈夫かぁー!?」

 

 

 

外にはここにいる人の家族がいるのだろう。

たくさんの声が聞こえる。

 

そして、閉ざされた階段が開いた。

続々とレスキュー隊と人々が入ってくる。

 

 

「お母さん!!」

 

 

先に見つけたのはお兄ちゃんだった。

妹もそれを見つけ、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら母の元へかけつける。

 

 

 

「すみません、お世話になりました、、」

 

「いえ、このぐらい」

 

「もう本当に感謝しきれません、、」

 

 

母親は泣きながら感謝を伝えてきた。

 

 

 

 

「あ、あそこの男性も一緒に、、」

 

 

慎太郎さんのいたはずの場所を見る。

 

 

しかし、そこにはもう姿がなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの災害から五年が経った ー

 

 

 

私は大学生から社会人となり、

復興をとても早いスピードで行われ

人々の心は癒えつつあった。

 

 

 

一般企業に就職するつもりで入った大学だったが

慎太郎さんにもう一度会いたい

という思いが強く、芸能事務所に所属した。

 

 

入ってすぐは仕事はゼロだったが

会いたい思い一心で仕事に熱中した。

すると一年ほど前から少しずつモデルの仕事や女優の仕事がはいるようになった。

 

 

そして私は仕事をしていくうちに

本来の目的を考える時間もなく、忘れつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「〇〇さん」

 

「はい!」

 

「今日はえっとこの収録ですね、」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 

 

今日も変わらず仕事をした。

やっていて大変な職業だが、楽しさは感じていた。