静かに、虚しく、①

 

 

 

ガタンゴトンと揺れる地下鉄。

毎日見慣れた同じ立ち位置の同じ景色。

この普通なところが好き。

 

 

 

「ドキドキするねっ…」

 

 

私の前の席に座っている兄妹。

2人で手を繋いでニコニコしている。

そんな彼らを笑顔で見ていたらふと目が合った。

 

「あっ、、こんにちわ」

 

「こんにちぃわぁ」

 

妹の女の子が照れくさそうに答える。

 

「今日は2人なの?」

 

「うん、お母さんの美容院まで2人で行くの」

 

お兄ちゃんがしっかり手を繋いだまま、しっかりした口調で言う。妹もうんうんと笑顔で首を振る。

 

「そうなの!凄いねぇ!」

 

でしょ〜!とふふふと笑う2人。

 

 

 

 

ピロンピロン、ピロンピロン、、、

 

突然、電車内で響く携帯の警報音。

この音には嫌な思い出があった。

そしてその音と一緒に、嫌な思い出が振り返る。

 

 

ガタガタガタ、ギーーーー

と音を鳴らしながら走る電車。

キャーと揺れる車内で響く声。

 

 

「あっ」

 

 

目の前の兄妹に目がいった。

兄は涙を我慢し、妹は泣いていた。

 

 

「大丈夫、大丈夫だから」

 

兄妹は震えていた。

車内の悲鳴と警報が聞こえないように

持っていたタオルとカバンで彼らの耳と頭を守る。

 

 

その瞬間

 

 

 

ドン!!!

 

 

と地面の奥から嫌な音がした。

その瞬間、車体が一気に傾き、窓ガラスが割れた。

悲鳴にならない悲鳴が車内に響き渡る。

すぐ近くホームに車体が止まる。

 

 

目を開けるとコケている人、怪我をした人で車内が埋まっていた。

 

腕の中にいる兄妹を見ると無事だった。

 

 

 

「すぐに車内からホームに出てください!」

 

駅員と思われる声が聞こえた。

 

 

「大丈夫?」

 

泣きながら、縦に首を振る兄妹。

 

「大丈夫、大丈夫、お姉ちゃんがついてるから。」

 

 

なんとか車内から出ようと

兄妹を立たせ、体に傷がないか確認する。

 

「よかった、、、」

 

 

そして立とうとした瞬間、

地面に手をついた左腕が痛んだ。

見ると、ガラスで切れて血が出ていた。

 

 

「お姉ちゃん、、、」

 

「ふふ、こんぐらい大丈夫!」

 

 

このぐらい、と思いタオルで血を止める。

 

 

「ごめんね、すぐ避難しようね、」

 

 

立ち上がろうとするが、立てない。

足首が動かなかった。

力を入れるが、それと同時に衝撃的な痛みが走る。

 

 

「ごめんね、お姉ちゃん怪我してるみたいなの、、2人で先に行けるかな?」

 

 

泣きながら私の右腕にしがみつく妹。

手の握りこぶしが震えるお兄ちゃん。

 

 

『あの、、大丈夫ですか?』

 

 

顔をあげると一人の男性がいた。

 

「すみません、、私が怪我してしまったみたいで、、先にこの子達を連れて行って貰えますか?」

 

 

『分かりました、あの、貴方は大丈夫ですか?』

 

 

「大丈夫です、後から追うので、先に、、」

 

 

『はい』