お別れの日 ②

 

 

 

遊園地。子供みたいに遊んだ。

入場者数10万人目だった。

北斗は知らない人のようにクスクス笑って、私がインタビュー受けるのを見ていた。

ジェットコースター。5回も乗った。

アイスクリーム、寒いのに食べた。

お化け屋敷で北斗を脅かした。

階段で盛大にズッコケて、北斗に笑われた。

小さい子が北斗の変顔を見て泣いた。

昨日のM-1のギャグを2人で話して、お腹を抱えて笑った。顔が痛かった。

 

 

 

 

 

 

 

気づいたら、夜だった。

 

 

 

 

 

 

 

家まで、3分のところにある公園。

昼間は子供たちで溢れているけど、夜は誰もいない公園。ここが私たちの思い出の場所。

 

 

 

「寒いね」

 

「もう12月じゃん」

 

「そっか、寒くないとね」

 

「クリスマスかぁ〜」

 

「 … 」

 

 

 

空気が悪くなる。

今は12月20日。そう。今日別れる。

クリスマスは、一緒にいない。

 

 

 

 

「あのさぁ」

 

「うん」

 

「、ふふ」

 

「何?笑」

 

「私の事、」

 

「、うん」

 

「嫌いになったの、?」

 

 

彼の顔を見て言えない。空を眺めた。

涙を止めるのが精一杯で、声が震えた。

かっこ悪いな、私、なんて思った。

 

 

「好きだよ」

 

彼は笑顔だった。静かな笑顔。

 

「じゃ、、どうして、?」

 

私の目には受け止めきれないほど涙が増えて、。

 

「好きだから」

 

彼が変な返事をするから、涙が流れた。

 

「なんでよ、、」

 

彼の顔を見た。真剣な顔をしていた。

鼻が赤いけど、静かな顔をしていた。

 

 

 

「好きだから、迷惑かけられない」

 

「迷惑なんて、かけてないじゃん、」

 

 

彼はそう。いつも。

違うって言っても、そうだと言い張る。

 

 

「悲しむから、悲しませたくない」

 

「なんで、悲しむ、、」

 

 

北斗の目から涙が流れた。

言葉がそこから出なかった。

泣いた姿なんて、見たことなかったから。

 

 

「話し合おう、?」

 

「ダメだ」

 

 

話し合い。彼が大切にしてきた事。

喧嘩した時は必ずしてきた話し合い。

それを彼はしないと言い張っている。

 

 

「、はぁ、、好きだった?」

 

「うん、好きだった」

 

「じゃ、今は?」

 

「好きだよ」

 

「どうして?」

 

「好きに理由なんてないよ」

 

「私も好きだった」

 

「嬉しい」

 

「愛してた」

 

「俺も」

 

 

 

お互いに見つめ合いながら、泣きながら

途絶えることなく、言い続けていた。

 

 

 

「ありがとう」

 

「ありがとう」

 

 

これが最後の言葉だった。

私は帰り、すぐにベットに入った。

化粧も落とさず、服も着替えず、お風呂にも入らず

泣いた。二時間ぐらい泣いていたと思う。

気づけば意識は夢の中だった。

 

 

「ピピピピ … ピピピ」

 

いつものアラームを止める。

今日が仕事が休みで良かったと思った。

泣きすぎたのか目はパンパン、頭は痛い。

 

 

お風呂に入って、何も焼いてない食パンを真っ白なお皿に乗せて、コーヒーを用意して、座る。

 

携帯は開く気になれなかった。

 

 

何気なく、テレビをつけたくなった。

 

「8時か … 」

 

ジャンケンやってる最中かな。

 

「昨夜、時刻未明、男性が倒れているのを見つけられました。男性は松村北 … 」